過疎地域の水道インフラ問題をAIで解決
2021.11.08
- 安全・安心なまちづくり
- 環境
- 生活関連
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行政機関との連携が進むとみられる
スタートアップの事業領域 - AI水処理技術
- 連携先が進むとみられる行政機関
- 過疎地域の自治体
- 行政機関側の課題
- 人口減に伴う水道収益の減少
- 導入が進むとみられるプロダクト
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災害によって断水した場合でも限られた
水量で入浴機会などを提供できる、
自律分散型の水循環システム
- 導入以後の感想/結果
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AIの技術によって電気の使用量や
排水量が削減、ランニングコストの
改善につながる
- 今後の展望・課題
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過疎地域や島しょ部での
水道事業の社会課題を解決
日本の過疎地域では人口減などによって既存型の水道インフラを維持管理することが難しくなっており、老朽化した水道管の交換費用を捻出できないケースが相次ぐ恐れがある。こうした課題に対処するものとして注目を集めているのが簡易水道など小規模型の水処理プラントと、それを支えるベンチャーのAI水処理技術だ。
Jパワーの浄水処理サービスとは
電力会社のJパワーは、地下水浄水処理サービス事業を展開している。病院や大学、空港などの敷地内に高度浄水処理プラントを設置し、地下水や工業用水を浄化処理することで、第二の水として飲料水や雑用水、純水などを供給するサービスだ。浄水プラントの設置費やメンテナンス費用などはJパワーが負担し、顧客からは浄水1立方㍍当たりのサービス料金を収受する仕組みで、すでに60数か所で稼働している。
例えば透析患者らが通院する一定規模の病院の場合、大規模地震などで停電になり水の供給が停止されることを想定し、最低でも3日分の水を確保する必要がある。BCP(事業継続計画)対策を講じるためにも有効な手段だといえよう。
過疎地域では3分の1の水道事業者が赤字
Jパワーは今後更なる導入拡大を計画しており、とくに市場開拓に力を入れていくのが過疎地域の自治体だ。こうしたエリアでは簡易水道といわれる小規模の浄水場に依存するケースが多いが、人口減少によって水道収益も減っており、3分の1の水道事業者が赤字経営となるなど多くの課題を抱えている。都市部と連携した水道の広域化も難しいだけに、Jパワーは浄水処理サービス事業を通じ培ってきたノウハウを踏まえ、水処理プラントによる貢献を推進する。
最適な水処理のプロセスを自律制御
事業を展開する上で特に小規模水道の整備に重要な役割を果たすのが、自律分散型水インフラの研究開発・事業展開を行うWOTA(ウォータ、東京都豊島区)のデータ・AI技術だ。WOTAは、災害によって上下水道が断水した場合でも水循環技術によって限られた水量で入浴などの水利用機会を提供できる、自律分散型の水循環システム「WOTA BOX」を実用化している。JパワーはWOTAに出資しており、独自開発したセンサーで水質や装置の状態を監視し、そのデータに基づいて最適な水処理のプロセスを自律制御するシステムを活用して事業を推進する。
電気の使用量などが削減、ランニングコストを改善
プラントの浄水処理工程では、砂ろ過装置や膜の性能を維持する目的で、毎日洗浄を行う必要がある。このため既存のシステムではタイマーを活用し、定期的に定めた量の水を流していた。これに対してWOTAのAI技術を組み込んだ新型システムは、「センサーにより砂ろ過装置や膜の汚れの除去が確認できたらそれ以上の水を流さなくてよい」と判断。結果として電気の使用量や排水量が削減され、「ランニングコストの改善につながって競争力も発揮されるため、普及促進への原動力となるだろう」とJパワー担当者は話す。過疎地域や島しょ部での水道事業の社会課題を解決するシステムとして、重要な役割を果たしそうだ。