避難所のDX化で避難状況を瞬時に把握、物資補給がスムーズに AIとIoTを活用して空き情報を配信「バカン」

2021.12.09

官公庁と連携したスタートアップ
AIとIoTを活用して
空き情報を配信する
バカン
連携先の行政機関
東京都世田谷区や豊島区、
多摩市など1万3000カ所以上で
避難所の混雑を可視化
行政機関側の課題
約20%の避難所で定員オーバーが
発生するといった地域も顕在化

地球温暖化に伴い大雨や台風による被害が大きくなり、避難所が開設されるケースが増えている。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大によってソーシャルディスタンスが求められるようになり、しっかりした対策を講じれば講じるほど、定員を下回る人数しか受け入れられないという事態が生じるようになった。こうした状況を踏まえ、バカンが提唱しているのは、混雑具合を可視化した上で住民の属性などを効率的に把握できる避難所のデジタル化。毎年のように大型台風が近辺を通過する宮崎県都城市が本格運用に向けた準備を進めている。

官公庁と連携したスタートアップAIとIoTを活用して空き情報を配信するバカン
デジタル化事業に本格的に取り組み始めたのが、AIとIoTを活用して駐車場や名所などあらゆる空き情報を配信するバカン(東京都千代田区)だ。
連携先の行政機関東京都世田谷区や豊島区、多摩市など1万3000カ所以上で避難所の混雑を可視化
すでに2021年10月1日の時点で約200の自治体と契約し、1万3000カ所以上で避難所の混雑を可視化している。東京都では多摩市、豊島区、世田谷区、小金井市、狛江市、清瀬市が導入。多摩市では2019年の台風19号で土砂崩れや床下浸水などの被害が発生し、約2600人が避難したという経験に基づき住民にサービスを提供している。
行政機関側の課題約20%の避難所で定員オーバーが発生するといった地域も顕在化
自治体側が避難所を開設する際には、誘導だけでなく避難者の情報登録をはじめとした多くの作業が発生する。結果として雨の中で行列ができるケースや、約20%の避難所で定員オーバーが発生するといった地域も顕在化。混雑具合の見える化や効率的な運営が求められていた。

導入したプロダクト

避難所での非接触型のスマート受付

バカンが提供するのは、スマートフォンなどにアクセスすることによって、避難所の位置や混み具合を地図上で確認できるサービス。その結果、分散避難を促し避難所難民にかかわる問題の回避に貢献する。また、このサービスを軸にして、地方自治体向けソリューションの開発・販売を行うGcomホールディングス(福岡市博多区)と連携しながら避難所のデジタル化を進めていく。最初に導入するのは、毎年のように大型台風が近辺を通過する宮崎県都城市。4月から本格運用を開始する予定だ。
混雑の可視化に加えて新たに提供するデジタル化サービスは、非接触型のスマート受付。避難者の情報を自動的にデータ化し管理・分析できるようにするのが目的で、スマートフォンで事前にユーザー登録を行えば、避難所では2次元バーコードを提示するだけで受付が完了する。また、各避難所にある保管物資などの情報を集約し災害対策本部で一元管理できるため、物資補給などがスムーズになる。

導入以後の感想/結果

カードへの記入方式に比べ受付時間を最大で80%削減

スマート受付に関しては、本格運用に先立ち行った実証実験で顕著な効果が現れている。岐阜県大垣市で行った体験会では、避難者カードを記入する従来の方式に比べ、受付時間を最大で80%削減できることが判明した。

今後の展望/課題

より高度な避難所向けサービスにつなげる

バカンの河野剛進代表取締役は「年齢層をはじめとして、どういった人たちが避難しているのかを瞬時に把握でき、受付時間といった点も明確にできる。これによって『A避難所には、この物資を重点的に配布したほうが良い』といった対策を講じるなど、より高度なサービスの提供につながる」とデジタル化がもたらす効果を強調する。
気候変動による自然災害は深刻化しており、防災DXに対する関心が高まっているだけに、避難所支援サービスに対するニーズは一段と高まりそうだ。