COVID-19によって希薄になった近所交流を活性化し、子育て環境の整備につなげるアプリ

2021.12.14

  • 生活の利便性
  • 環境
  • 建設・不動産
行政機関との連携が進むとみられる
スタートアップの事業領域
アプリサービス
連携先が進むとみられる行政機関
子育て世帯が多い自治体
行政機関側の課題
COVID-19による住民間の
コミュニケーション不足
導入が進むとみられるプロダクト
子育て世代向けのコミュニティアプリ
導入以後の感想/結果
同じ分譲マンション内の入居者のみが
登録・使用でき、情報交換やモノの
譲り合いなどを通じ、近所同士の
交流をサポート
今後の展望・課題
マンション内だけではなく周辺地域との
連携や街全体の活性化へと
発展させること

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、住民間のコミュニケーション不足を招き、とくに子育て世帯の孤立が懸念されている。こうした事態を踏まえて大手住宅メーカーとベンチャー企業が、近所交流のきっかけづくりとなるアプリを共同で開発した。今後、自治体にも同様のシステムが普及し、豊かな子育て環境の整備につながることが期待される。

旭化成ホームズグループとスタートアップのクレヨンが共同で開発した、子育て世代向けコミュニティアプリ

100住戸を超えるような大型マンションは、まるで1つの町や地域のようなもの。居住者同士の活発な交流によって、良好なコミュニティが形成されていることが求められる。マンションの管理・運営を円滑にし、資産価値を向上させるためにも、こうしたサイクルを構築することは重要な課題だ。ただ、長い歳月と、強力なリーダーの力を必要とするだけに、新築時からコミュニティを醸成できるような手法が望まれていた。
旭化成ホームズくらしノベーション研究所の根本由美主任研究員は、育休を活用してカナダのバンクーバーに移住していたことがある。その時はSNSを通じ地域コミュニティの輪に加わることができ、ゼロ歳児だった子供のベビーベッドや洋服を譲り受けた。その経験を踏まえて旭化成不動産レジデンス、アプリサービスを提供するスタートアップ企業のクレヨン(東京都練馬区)と共同で開発したのが、子育て世代向けのコミュニティアプリ「GOKINJO(ゴキンジョ)」だ。

情報交換やモノの譲り合いなどにつなげる

同じ分譲マンション内の入居者のみが登録・使用できるコミュニティアプリで、情報交換やモノの譲り合いなどを通じ、近所同士の交流をサポートする。導入しているのは総戸数が227戸という大規模マンションで、2020年に入居を開始したアトラス加賀(東京都板橋区)。全体の約8割がサービスを活用しており、おもちゃや未使用のおむつの譲渡などを通じ、子供のモノを介したコミュニティがじわじわと広がりつつある。また、入居者限定なので「外部サイトに比べると建設的な意見が多く、信頼できる」といった意見も寄せられている。

キッズデザイン賞を受賞

GOKINJOに対する評価は高く、キッズデザイン協議会が主催する「第15回キッズデザイン賞」を受賞した。旭化成ホームズグループは都心部にあるマンションの建て替え事業を推進している。経営企画部CONNECTプラットフォームプロジェクトの中村磨樹央リーダーは「建て替え案件も含め、新築マンションを中心に導入を働き掛け、新居生活の開始時から良好なコミュニティ醸成を支援し、ゆくゆくは、周辺地域との連携や街全体の活性化へと発展させていきたい」と話す。
近所交流の機会が減少すると生活の利便性だけではなく、情報の寸断を呼び起こし、子供が安全に暮らせるための環境づくりに影響を及ぼす可能性がある。GOKINJOのようなサービスは、こうした事態を防ぐためにも有効だといえる。