解体工事のコストを比較できるようにして、空き家対策を推進 解体工事の一括見積りWebサービス「クラッソーネ」

2021.12.21

官公庁と連携したスタートアップ
クラッソーネ
連携先の行政機関
埼玉県川越市、鳥取県米子市など
導入自治体は徐々に拡大
行政機関側の課題
愛知県南知多町は
3戸に1戸が空き家

日本の空き家の数は右肩上がりで推移している。総務省の調査によると2018年時点での空き家率は13.6%で、さらに拡大する見通し。景観や治安、防災などで問題が深刻化する恐れがあり、人口減少が著しい地域だけでなく都心でも空き家対策の推進は喫緊の課題だ。こうした現状を踏まえニーズが高まっているのが、解体工事の専門会社と施主をマッチングするクラッソーネのサービス。新潟県南魚沼市や兵庫県尼崎市などが導入している。

官公庁と連携したスタートアップクラッソーネ(名古屋市中村区)
地方自治体との間で解体支援に関する連携協定を相次いで締結しているのが、ベンチャー企業のクラッソーネ。提供するのは、約1500社に上る全国の解体工事の専門会社と施主をマッチングするサービスだ。
連携先の行政機関埼玉県川越市、鳥取県米子市など導入自治体は徐々に拡大
新潟県南魚沼市や奈良県川西町、埼玉県川越市、鳥取県米子市などサービスを導入する自治体はじわじわと広がっている。2021年は18自治体との連携を発表した。効率的に解体を進めるためのサービスだ。
行政機関側の課題愛知県南知多町は3戸に1戸が空き家
提携先のひとつである愛知県南知多町は、知多半島の最南端に位置する漁業の基地として知られているが、空き家問題が深刻化している。その数は約1100戸。3戸に1戸が空き家という計算だ。このうち老朽化などによって倒壊の恐れがあるなどの建物は1割以上を占める。

導入したプロダクト

インターネットを通じ解体費用の見積もりをシミュレーション、複数の解体工事会社を比較

各自治体が導入しているのは解体工事の一括見積りWebサービス「クラッソーネ」。約1500社に上る全国の解体工事の専門会社と施主をマッチングし、インターネットを通じ解体費用の見積もりをシミュレーション、複数の解体工事会社を比較できる点が特徴だ。コスト減につながり工事費は一般の解体費に比べ平均で18.7%低く抑えられている。

導入以後の感想/結果

持続可能な街づくりをサポート

空き家を適切に管理せず放置した状態が続けば、景観の悪化を招くほか、ごみの不法投棄といった防犯上の不安など、様々な悪影響が指摘される。持続可能な街づくりを実現するための懸念材料になりかねないだけに、サービスの本格利用に期待が高まる。

今後の展望/課題

防災という観点から都市部でのサービスも活発化する見通し

提携先は人口減少問題に直面する自治体だけではない。都市部でもサービスを活用するケースが顕在化している。そのひとつが兵庫県尼崎市。兵庫県は1995年の阪神淡路大震災で甚大な被害を受け老朽家屋の倒壊も目立ったことから、防災性に優れたまちづくりを進めていくためにも空き家対策の推進は喫緊の課題となるからだ。
東京都は他地域に比べると土地は流通しやすいという特性がある。それでも下町エリアを中心に狭い土地に建つ空き家は多い。クラッソーネの堀口晃司取締役COOは「木造密集市街地の延焼リスクを抑えるといった防災の観点から、東京でも抜本的な対策に早急に取り組む必要がある」と警鐘を鳴らす。安全・安心なまちづくりを進めていくためにも、解体工事を円滑に進めるための仕組みづくりが急務な課題といえよう。