夜間オンコールの代行によって介護施設の運営負担を軽減 医療DXスタートアップ「ドクターメイト」

2022.01.31

官公庁と連携したスタートアップ
医療DX事業を展開する
ドクターメイト
連携先の行政機関
福井県勝山市と
北九州市で実証実験
行政機関側の課題
夜間オンコールが
離職の懸念材料に

介護施設の運営は、とくに夜間帯の負担が大きい。日中に比べスタッフの数が少ない中、入所者の高齢化が進んだことで救急搬送を行うケースが増えており、その対応で入居者の十分なケアが難しくなっているからだ。また、介護スタッフが「搬送をするかしないか」の判断を下すのは大きなストレス。夜間勤務に対する不安感は離職の主要因になりかねない。こうした現状に危機感を抱いた北九州市などは、ドクターメイトが提供する夜間オンコール代行サービスを導入、介護負担の軽減に取り組み始めた。

官公庁と連携したスタートアップ医療DX事業を展開するドクターメイト(東京都新宿区)
看護師が夜間の緊急事態発生時に、迅速な対応ができる状態で待機する勤務形態のことを夜間オンコールという。しかし介護施設の場合、夜間に医療関係者を確保することは決して容易ではない。こうした現状を踏まえ導入が加速しているのが、医療DXスタートアップのドクターメイト(東京都中央区、代表取締役医師・青柳直樹氏)が提供する夜間オンコール代行サービス。もう一つの主力事業であるオンライン医療サービスを併せると、全国で約350の介護施設と関わっている。
連携先の行政機関福井県勝山市と北九州市で実証実験
このサービスに着目したのが福井県。勝山市では総合病院と消防本部、介護施設が連携して2月末までのスケジュールで実証事業を進めている。
北九州市は2月から7月にかけて実証実験を行う。ドクターメイトと北九州市のマッチング役を担ったのは、官民共創プラットフォームの「逆プロポ」。全国の自治体に官民共創で取り組みたい地域課題を公募し、エントリーがあった中からドクターメイトが北九州市のプロジェクトを採択した。
行政機関側の課題夜間オンコールが離職の懸念材料に
福井県は全国より5年程度、高齢化が先行しており、介護施設サービスの利用者割合が全国に比べ高くなっている。今後の要介護高齢者の伸びに対応するには職員の増員が不可欠となるが、求職者の募集は非常に難しい状況にある。このため職員の離職防止に向けた取り組みが必要と判断。負担が大きい夜間オンコール対策に乗り出すことになった。
北九州市は政令指定都市の中で最も高齢化が進んでおり、介護現場にロボット技術等を導入するなど、介護作業の効率化や質の向上に力を入れており、ドクターメイトとの連携によって先進的介護の実現に向けた動きを加速する。

導入したプロダクト

救急隊は施設へ到着次第、介護職員の同乗を求めることなく迅速に病院へ搬送する

通常、介護施設では夜間帯でも施設看護師に携帯電話を肌身離さずの状態で待機してもらい、施設入居者に転倒や急変などがあり救急搬送が必要となった場合、すぐに施設へ駆けつけて救急隊や病院とコミュニケーションを図る必要がある。ドクターメイトが提供する代行サービスは①介護施設の夜間スタッフから、ドクターメイトの看護師へ電話で相談が入る②看護師が緊急性を判断し、救急搬送の要否をアドバイスする③電話で相談を受けた内容をレポートとして作成し、施設へレポートを送信④救急搬送が必要と判断した場合は、ドクターメイトから病院へ情報が連携され、受け入れの準備を整えられる-という流れだ。患者情報が先んじて病院へ情報連携されているため、救急隊は施設へ到着次第、介護職員の同乗を求めることなく迅速に病院へ搬送できる。

導入以後の感想/結果

現場負担が少なくなったことで、採用がしやすくなった

自治体関連の検証はこれからだが、すでにサービスを導入している施設からは「『夜間の負担が減少した』『負担が少なくなったことで、採用がしやすくなった』といった声が届いている」(青柳代表取締役)。また、レポートとして正確なデータを残せるため、不測の事態が発生したときにもスタッフを守ることができるという。

今後の展望/課題

超高齢化社会の進展に伴いニーズは高まる見通し

超高齢化社会の進展に伴い、福井県が抱えるような課題に直面する自治体は激増する見通し。とくに人口が多い都市部ほど、地域インフラが十分でないだけに問題が深刻化するとの見方もある。こうした問題を放置したままでは行政サービスの低下につながり、自治体間の競争も不利な立場となるだけに、自治体が先導して代行サービスを導入する動きは活発化するとみられる。