情報不足という課題を解決し、最適な相手先を探し出す 民間事業者と自治体のマッチングツール

2022.05.13

官公庁と連携したスタートアップ
企業と地方自治体の協業加速に
向けた共創プラットフォームを
提供するクラウドシエン(広島市中区)
連携先の行政機関
岡山県真庭郡新庄村
行政機関側の課題
民間との連携を推進するに当たり、
情報を効率的に入手するのが難しい

人口減少や高齢化の進展に伴い、地方都市では社会経済の維持や活性化が喫緊の課題となっている。課題解決に向けては官民の連携がカギを握るが、情報不足によってお互いに最適な相手先を探すのは難しい。こうした現状を踏まえクラウドシエン(広島市中区)が開発したのは、民間事業者と自治体とのマッチングツール「Local Hub(ローカルハブ)」。地域活性化に力を入れる岡山県真庭郡新庄村(しんじょうそん)も、民間企業とのさらなる連携を目指し、クラウドシエンのサービスを取り入れた。

官公庁と連携したスタートアップ企業と地方自治体の協業加速に向けた共創プラットフォームを提供するクラウドシエン(広島市中区)
クラウドシエンはAIにより申請できる助成金・補助金・公的融資を自動選定し、専門士業をマッチングするプラットフォームを提供している。また、企業と地方自治体の協業を加速させるため、「クラウドシエンBtoC」という共創プラットフォームを提供している。同社が開発した行政情報検索エンジンを活用。行政に向けて営業提案を円滑に行えるようにする情報を自動的に集約し、地方自治体の具体的なニーズを自社サービスに対応する形で可視化するサービスだ。
連携先の行政機関岡山県真庭郡新庄村
クラウドシエンと協業したのは岡山県の西北端で、鳥取県との県境に位置する人口約868人の新庄村。日本で最も美しい村に認定されている。転入者も多く、この5年間で約7分の1を占めるようになった。
行政機関側の課題民間との連携を推進するに当たり、情報を効率的に入手するのが難しい
新庄村は民間企業との連携にも力を入れている。そのひとつがカヤックとの取り組みで、コミュニティ通貨(電子地域通貨)サービス「まちのコイン」が活用されている。年間約10万人訪れる観光客の多くは村内の商店を利用することがなく、観光による地域内経済への大きな効果を生むことができていない現状を踏まえたサービスで、転入者を含めた住民の結束を高めるとともに、商店の認知度を上げ、地域内の経済循環を高めるのが狙いだ。
今後も移住定住の促進に繋げるため、民間企業との適正な連携に力を入れて事業創出や地域経済循環事業などを強化する。連携に当たっては、「企業に丸投げをするのではなく、共に事業に取り組み適正な対価を企業に支払う」というのが、千葉智明・新庄村役場総務企画課主任の考え方。それを実現するに当たっては、とくに信頼できる企業・サービスに関する情報をより効率的に入手する必要がある。こうした課題に対処するサービスとして、Local Hubに注目した。

導入したプロダクト

クラウドシエンが開発した「Local Hub」

Local Hubは地域活性化に関心がある民間事業者と地域活性化を積極的に行いたい自治体との間を、分かりやすいアウトプットをマッチングさせるツール。「自治体側が『こういったことに取り組んでみたい』というのをアップした上で、主導権を握りながら企業側にアプローチできる」(千葉氏)点が特徴だ。

導入以後の感想/結果

職員の意識も向上

導入を開始したばかりだが、連携先を効率的に開拓するための有効と認識しており、千葉氏は「職員の意識向上にもつながるツール」とみている。

今後の展望/課題

官民連携の加速へ

官民の連携はさらに加速させるには(1)新しい事業に割く余裕がない(2)連携できる企業を知らない(3)信頼できる起業家どうか分からない(4)予算がない―といった自治体側の課題を克服することが前提条件となる。企業・サービスや補助金・交付金などに関する情報をいかに収集できるかが重要となってくるだけに、Local Hubが果たす役割は大きいと言える。