妊娠、出産、子育ての孤立予防に貢献するため、産婦人科・小児科オンラインを東京都府中市などに納入 Kids Public

2022.07.12

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官公庁と連携したスタートアップ
小児科・産婦人科オンラインを通じた
遠隔健康医療相談サービスを
提供するKids Public
(東京都千代田区)
連携先の行政機関
東京都府中市
千葉県市原市など
行政機関側の課題
自治体との電話相談は、
直接の会話が不可欠で
ハードルが高い

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、産後の孤立問題が浮き彫りになった。うつや幼児虐待を引き起こしかねないだけに、信頼できる人に相談できる環境を整備することは喫緊の課題だ。自治体は対面や相談窓口を通じて支援を行ってきたが、ITを活用したサポートは十分でなかった。こうした現状を踏まえ、東京都府中市や富山県など各自治体が住民サービスとして相次いで導入しているのが、Kids Publicが提供する産婦人科・小児科オンラインだ。

官公庁と連携したスタートアップ小児科・産婦人科オンラインを通じた遠隔健康医療相談サービスを提供するKids Public(東京都千代田区)
Kids Publicは2015年に設立された。「対面で相談するのは恥ずかしい」という子育て世代は意外に多く、動画通話やチャット、専用フォームを通じ小児科医や産婦人科医、助産師に無料で相談できるサービスを展開している。また、オンラインジャーナルも提供しており、「子どもが発熱したときの対処法」といった医師や助産師による分かりやすい記事を配信する。
連携先の行政機関東京都府中市や千葉県市原市など
導入先の自治体の数は、すでに30を超えた。東京都府中市や千葉県市原市、富山県、新潟県村上市など、子育てやICT(情報通信技術)環境の力を入れる自治体が中心だ。
行政機関側の課題自治体との電話相談は、直接の会話が不可欠でハードルが高い
子育て中の保護者は日中に電話することが難しく、電話相談は直接会話する必要があるためハードルが高い。また、COVID-19の感染拡大によって対面サポートは行いにくくなり、住民向けサービスが低下する恐れがあるため、自治体側は危機感を抱いている。

導入したプロダクト

オンラインや画像を活用した「顔の見える」医療相談サービス

専用フォームから送られた相談に医師・助産師がテキストで回答する「いつでも相談」は24時間にわたっていつでも利用でき、平均で8時間以内に回答がある。サービスの強みは回答する相談員の専門性と想いへの共感で、小児科医や産婦人科医、助産師の中から「臨床経験豊富で、妊娠、出産、子育てに寄り添うという事業コンセプトに共感いただける人材にご参加いただいている」(橋本直也代表)。相談対応は点数で可視化し、一定の水準に達していない場合は是正を求める。

導入以後の感想/結果

産後うつ病高リスク者の割合が3分の2に減少

これまでに4つの代表的な実証実験結果を発表している。そのひとつが横浜市と東大で2020~21年度にかけて行った共同実証事業。産婦人科・小児科オンラインを妊娠期から提供することで、産後うつ病高リスク者の割合が3分の2に減少した。日本では約8人に1人が、産後1~3カ月の時期にうつ病を経験する。自殺やネグレクトにつながりかねないだけに、オンラインを活用したサービスの普及に期待が高まる。

今後の展望/課題

全国どこでもスマホからアクセスできる世界を実現

日本は核家族化が進んだこともあって、気軽に相談できる相手が少なくなった。全自治体が同サービスを導入し、「妊娠したら当たり前のようにスマートフォンでアクセスし、専門家に相談できる世界をつくること」が橋本代表の目標だ。