手間がかかる予防接種の予診票記入をオンラインで完結 母子モ

2022.08.24

官公庁と連携したスタートアップ
母子手帳アプリを提供する母子モ
(東京都新宿区)
連携先の行政機関
東京都板橋区や栃木県宇都宮市など、
2022年8月時点で480以上の
自治体が採用
行政機関側の課題
若い世代が住み続けたくなる
まちづくりを通じ、子育てを支援

乳幼児期には、予防接種が集中する時期がある。受診に当たっては接種する本数分の予診票を手書きで記入する必要があり、住民の負担は大きく、自治体・医療機関側も煩雑な事務作業を強いられるのが実態だ。こうした状況を踏まえスムーズな予防接種に向けて母子モ株式会社(以下、母子モ)が展開しているのは「母子モ 子育てDX」の小児予防接種サービス。予診票の記入や提出などの手続きをオンライン上で完了できるため、保護者と医師、自治体側の作業負担は大幅に軽減できる。すでに千葉県市原市が導入しており、他の自治体へも広がりそうだ。

官公庁と連携したスタートアップ母子手帳アプリを提供する母子モ(東京都新宿区)
ライフステージや悩みに合わせて女性をサポートする健康情報サービス「ルナルナ」を提供しているエムティーアイの子会社である母子モが、母子手帳アプリ「母子モ」を運営している。
連携先の行政機関東京都板橋区や栃木県宇都宮市など、2022年8月時点で480以上の自治体が採用
アプリは、スマートフォンやタブレット端末、パソコンに対応したサービス。妊産婦と子どもの健康データの記録・管理や予防接種のスケジュール管理、出産・育児に関するアドバイスの提供、地域情報などを提供する。年間約100自治体のペースで導入が進んでおり、2022年8月時点で480以上の自治体が採用している。
行政機関側の課題若い世代が住み続けたくなるまちづくりを通じ、子育てを支援
日本は子育て不安の強い国だ。内閣府の国際意識調査(20年度)では「子どもをうみ育てやすい国だと思わない」と答えた割合が61%に達し、少子化対策が進むスウェーデンやフランス、ドイツを大きく上回った。自治体は人口危機に向き合い、産み育てやすい環境づくりに全力を尽くす必要があり、母子モに対するニーズが高まっている。

導入したプロダクト

千葉県市原市が母子モの小児予防接種サービスを導入

「母子モ」を活用して、自治体や医療機関の子育て関連事業のオンライン化を支援し、より安心・安全で簡便な子育て環境を地域と共創するのが「母子モ 子育てDX」。市原市が導入したのは、子育てDXの「小児予防接種サービス」で、自治体から配布される専用QRコードを読み込めば、「母子モ」アプリ上で予診票の入力と医療機関への提出を行える。複数接種する場合は予診票への一括入力が可能。アプリには、煩雑な予防接種スケジュールを自動で一覧作成できる機能もあり、接種間違いの軽減や予防接種に係る手間を大幅削減し、忙しい子育て世帯をサポートする。

導入以後の感想/結果

「紙には戻れない」と高い評価

市原市では9カ所の医療機関が導入している(22年7月時点)。記入や入力、受付などの業務が大幅に削減され、医療機関や保護者の評価は高く、「もう紙には戻れない」といった反応がある。また、市原市とは別の8自治体・9医療機関で地域実証を行った結果、参加した保護者の97.9%から、「予診票の電子化が始まった際には、利用したい」との回答を得た。こうした評価を踏まえさまざまな子育て関連事業のオンライン化を支援するサービスの開発を進めていく計画だ。

今後の展望/課題

「骨太の方針2022」も後押し

母子モの宮本大樹代表取締役は「これまでと全く異なる世界観を実現する。安心・安全の確保という観点からも重要な役割を果たす」と、DX化のメリットを説く。政府は「骨太の方針2022」で、医療のDX化を強力に推進する方針を打ち出しており、子育てDXも普及に弾みがつくとみられる。