後継者問題の解決に貢献するプラットフォーム ライトライト
2022.10.25
- 官公庁と連携したスタートアップ
- ライトライト(宮崎市)
- 連携先の行政機関
- 宮崎県えびの市や高千穂町など
- 行政機関側の課題
- 事業承継の実態を十分に把握できていない
事業に関する全てを次の経営者に引き継ぐ「事業承継」に苦労する中小企業が増えている。国の試算によると2025年までに、約60万社が後継者難で「黒字廃業」に追い込まれる恐れがある。親子承継か廃業かM&A(企業の買収・合併)か-。事業承継の選択肢が少ない中、後継者問題の解決につながる新たなプラットフォームとして、ライトライト(宮崎市)のサービスが自治体の間で注目されている。
- 官公庁と連携したスタートアップライトライト(宮崎市)
- ライトライトは事業を譲りたい経営者と、事業を譲り受けたい候補者をマッチングさせる「relay(リレイ)」というサービスを提供している。誰がどこで、どういった事業の後継者を募集しているのかについて情報を公開し、共感をベースにしたオープンな事業承継の体験を提案する。
- 連携先の行政機関宮崎県えびの市や高千穂町など
- 同社の本社は宮崎市。このため宮崎県えびの市や高千穂町など県内の自治体を中心に、鹿児島県大崎町や鳥取県といった形で連携先が広がり、共同でマッチングサイトを運営している。また、経済産業省による「令和4年度地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業」に採択された。
- 行政機関側の課題事業承継の実態を十分に把握できていない
- 地域住民の健康を支えてきた病院が突如閉鎖したり、町内に1件しかない書店やクリーニング店が廃業するようなケースが顕在化している。その結果、近隣の都市に顧客が流れ、地元経済は地盤沈下の恐れがある。自治体側としては事業の喪失を回避したいところだが、事業承継に関わる情報が公開されていないケースが多く、「どのように対応すればよいのか」といった声は根強い。
導入したプロダクト
事業承継のマッチングプラットフォーム「relay」
relayは従来のM&Aマッチングサイトと異なり、「どんな想いで企業や店舗を運営してきたか」といったオーナーの横顔を含めた想いを記事化し、後継者を公募する仕組みだ。これまでのサイトはクローズ型。業態や利益に関する限られた情報しか公開されていなかったのに対し、「3台の冷房設備が設置されている」といったように店舗を譲り受けた後の運営をイメージしやすい情報も記事に盛り込まれている。
導入以後の感想/結果
天然酵母のパン屋が予約の取れないカフェに
宮崎県高原(たかはる)町との連携では、天然酵母によるパン屋の事業承継が成功した。受け継いだのは隣接する小林市出身の女性。千葉県のパン屋で働いていたが、大ファンだった高原町の店舗が承継を募集しているのを知り、一家4人で移住し、経営に乗り出した。今では町内外から客が来る人気カフェとして有名だ。自治体との連携に基づいたものだけではなく個別の店舗とも連携し情報を公開しているが、「UIターンしたいが、適切な店はないか」「うどん屋で働いており、独立を目指していたが初期投資を行えなくて諦めていた。ぜひとも承継したい」といった多くの問い合わせが、30~40代を中心に寄せられている。
今後の展望/課題
2025年までに100自治体と連携する計画
中小企業庁は黒字廃業が続いた場合、2025年までの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると指摘している。地域経済の衰退に直結する課題だけに、「第三者への事業承継はマイナス」といったイメージを払拭できるrelayに対する期待度は高まる。ライトライトでは2025年までに100自治体と連携する計画だ。