【イベントレポート】地域振興へのVRツアー活用事例をご紹介

2022.12.23

株式会社SeiRogai(セイロガイ、東京都港区)は、TOKYO UPGRADE SQUARE(TUS)によるサポートの下、東京都府中市の「コロナ課題解決型ソーシャルビジネス協働事業助成金」を活用し、VR360度(三次元仮想現実)動画の開発に乗り出した。TUSの情報発信機能が、両者のマッチングを支えた。このほど開催したイベント「地域振興へのVRツアー活用事例をご紹介」では、連携に至った背景などが紹介された。

スポーツ関連の観光資源を生かし、外国人観光客を誘致

府中市は京王線で新宿駅から約20分。交通の利便性が良く、東京観光の宿泊拠点としても利用されている。ラグビーのまちとしても有名で、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」では、世界各国のラグビーファンが府中を訪れた。また、「東京2020オリンピック」では、自転車競技ロードレースの舞台となった。こうした観光資源を生かし外国人観光客の誘致に力を入れている。

スタートアップと組んで新たなソーシャルビジネス

府中市は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、スタートアップ企業との協業でフレイル(身体能力の低下)予防のための高齢者向けアプリを提供。平均歩数が1600歩ほど伸びたという成果を残した。これに基づき他のスタートアップとの連携にも力を入れることを決め、府中市の課題を踏まえた「コロナ課題解決型ソーシャルビジネス協働事業助成金」という制度を導入した。2022年度は33件の応募があり9社のプランを採択した。府中市は今回の助成金制度に関する情報発信に関し、TUSのホームページ(HP)やメールマガジンも活用した。これら2つの媒体を通じて情報を入手した企業は多く、33社のうち15社に上った。

映像を360度にわたって映し出し没入感と臨場感を再現

日本の自治体が国内外に魅力を発信するためには、DX戦略の推進がカギとなる。セイロガイはコロナ禍を契機に、遠隔地からでも各自治体の魅力を体感できるバーチャルツアーへの需要が高まると見ており、府中市の観光振興に自社のソリューションが貢献すると確信し、助成金制度に応募した。府中市は「教育(Education)」と「エンタメ(Entertainment)」を融合したVR360度バーチャルツアー制作を得意としているセイロガイのこれまでの実績や、海外出身の創業メンバーならではの観光資源を発掘するノウハウを判断材料とし、採択に至った。

セイロガイが府中市の助成金を活用して開発したのが、映像を360度にわたって映し出す「府中市VR360度バーチャルツアー」。手元の携帯電話やパソコンから独自のDXプラットフォームを通じ、没入感と臨場感を兼ね備えた府中市のPR動画を楽しむことができるのが特徴だ。

歴史と文化を反映させたストーリーを形成

一般的なバーチャルツアーは風景の美しさだけに焦点を合わせるケースが多いが、府中市は武蔵国の国府を起源とする都内屈指の歴史と文化を有する街。このため独自の文化や歴史を詳しく学び、府中市独自のストーリーを強調した内容とした。例えば靖国神社など東京五社の一社である大國魂(おおくにたま)神社の紹介では、通常の市のPR動画と異なり、立ち入ったことがない場所も収めた。また、神主は英語も堪能であるため、本人にナレーションも依頼した。また、観光地だけではなく自然や地域コミュニティの魅力も伝わるような内容にしている。

テストマーケティングの評価も若い世代を中心に高い。9割以上が「実際に府中市に足を運んでみたい」と回答しており、VRからリアルへという道筋をつけた。また、製品の販売促進にもつながるという手ごたえもつかんだ。

コロナ禍以降、ほとんど目にしていなかった外国人観光客が急速に増えている。地方自治体にとっては、こうした観光客をいかに呼び込めるかが課題だ。バーチャルツアーはコロナ禍によって本格的に登場したサービス。地方自治体を中心に今後の普及が期待できるだけに、TUSの支援による府中市とセイロガイの連携事例は象徴的と言える。