【イベントレポート】行政職員限定イベント LG Meetupを開催しました!

2024.05.07

官民連携で行政課題解決を目指す、スタートアップと行政の連携拠点「TOKYO UPGRADE SQUARE(通称:TUS)」では、創業支援やスタートアップとの連携・共創を担当する行政職員の方々が、お互いの事例や悩みなどを共有し、相談し合えるネットワークを築く機会として、行政職員限定のイベントLG Meetup(Local Government Meetup) を2月9日に開催しました。

*なお、LG Meetupは2024年度より行政職員限定コミュニティ「ガブスク(Government Meetup Square)」と名称を変更し、行政職員の方々がさらに集い、相談し合える場づくりを進めてまいります。

2023年度2回目となるLG Meetupでは、規制のサンドボックス制度でスタートアップの成長を支援する内閣官房 新技術等社会実装推進チーム様の取り組み、さらに民間提案制度を活用してスタートアップとの連携を進める京都市様より同制度を活用したスタートアップとの連携事例を紹介いただきました。

当日は約30名の行政職員の方々が参加され、関連する法律や制度への対応など、お互いに行政職員だからこそ聞くことができる一歩踏み込んだ質疑や議論が活発に交わされました。また、終了後の交流会でも様々な意見交換が行われました。

本レポートでは、事例紹介頂いた当日の内容(概要)をご紹介します。

1. スタートアップの支援・連携で規制が関わる場合にどう対応すればよいか

スピーカー:
内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局
新技術等社会実装推進チーム 参事官補佐 野口 純 氏

規制改革とスタートアップ支援

政府はスタートアップへの投資額を、2022年度の8000億円規模から27年度には10倍以上の10兆円規模とする目標を掲げて、スタートアップ育成5か年計画を推進しています。

スタートアップは、新技術等を利用した新しいビジネスモデルに果敢に取り組み、機動的に事業展開を図るイノベーションの担い手ですが、イノベーションの社会実装に当たって既存規制が妨げとなるケースもあります。

このため、規制改革はスタートアップ支援の有効なツールの一つであり、政府もスタートアップを含む事業者が規制改革に参画する様々な制度を設けていますが、内閣官房はこれらの規制改革関連制度の一元的な相談窓口機能を有しております。各自治体においても、スタートアップと連携する際に規制が妨げとなる場合や、支援対象のスタートアップが規制に関して困っている場合には、規制改革関連制度を改めて確認いただくとともに、規制改革関連制度に関してわからないことがあれば内閣官房新技術等社会実装推進チームにご相談下さい。

規制改革関連制度は、実証を行い得られたデータから規制緩和を求める「規制のサンドボックス制度」や検討している事業の規制の適用の有無を確認出来る「グレーゾーン解消制度」など大きく分類して5つの制度から構成されています。どの制度を活用すべきか分からない場合、内閣官房に問い合わせをいただければ論点整理や適切な制度のご紹介といったアドバイスをいたします。

規制のサンドボックス制度で実証により円滑な事業化・規制改革を実現

「規制のサンドボックス制度」は、目指す新技術・新事業、規制との関係が問題となる場合、期間や参加者を限定し「実証」を行い、実証でデータを集め、それを基に円滑な事業化・規制改革に繋げることが出来る制度です。

内閣官房が相談窓口となり、解決に向けた実証計画の作成から実証まで伴走支援でサポートしていきます。加えて、正式申請前に規制所管省庁に事前調整を行うことで、迅速な実証につなげます。2018年度に同制度が創設されて以降、FinTechやモビリティ、ヘルスケアなど多様な分野で、31計画150者が認定されています(令和6年2月時点)。

自治体とスタートアップの緊密な連携で迅速に社会実装

自治体とスタートアップの連携事例の一つが、和歌山市に本社を置くスタートアップのglafit(和歌山県和歌山市)と同市で行った、切り替えが可能な電動モビリティに関する実証です。

実証では、glafitの電動モビリティのモーターを切断した人力モードのみの車体で実際に歩道を走行し、安全性に問題がないことを確認しました。その結果、モビリティ・カテゴリー・チェンジャー(モビチェン)の機構を取り付けた場合は、電動バイクと自転車の切替えを認める通達が警察庁より発出され、規制緩和につながりました。

glafitが和歌山市と連携して実証を行い、規制緩和の要望を行ったことにより、迅速な形での成果に結実したのです。



2. 「KYOTO CITY OPEN LABO」~新たなソリューションを実装する民間提案制度

スピーカー:
京都市 東京事務所 次長 長﨑 慎司 氏

民間から社会課題の解決につながるアイデアを募集

「KYOTO CITY OPEN LABO」は民間提案制度です。京都市が抱える社会課題の解決につながる技術やノウハウ、アイデアなどを民間から募集し、企業と京都市が実証実験を行うことで新たなサービスの実装につなげていくことを目的としています。また、提案の受付窓口を一本化することで、効率的な連携を目指しています。

実証実験次第で随意契約が可能に

制度には市が課題を提示するテーマ型と、自由提案のフリー型を設けており、自治体と民間側が連携しながら同じ立場で課題解決に向けて取り組んでいきます。実証期間は原則半年で、京都市は事業費用と広報支援を行うほか、実証実験フィールドやデータ、ネットワークを提供します。実証実験で有用性が確認された場合は、随意契約が可能となります。

財政部門との連携などで職員の不安感を緩和

ただ、行政職員にはトライアル&エラーではなく、成果と確実性を優先するマインドが定着しており、当初は職員の間に「成果の見通しが立たない中で取り組むべきなのか」といった意識がありました。こうした意識を変えていくため、庁内メールマガジンの配信や個別相談会などを随時実施しました。とくに後押しとなったのは、財政部門との連携です。新しい予算を獲得するには、民間事業者からのサウンディング調査を実施する必要があり、その手段として「KYOTO CITY OPEN LABO」が有効であるといった流れを形成することができました。

これらの取り組みにより、庁内から提供された課題の数も着実に増加。初年度にあたる2021年度と翌年度はそれぞれ10件程度でしたが、23年度は1月末時点で24件と大幅に増えました。また、民間からの提案数は、今年度だけで約100件、採択数も初年度の11件から39件へと顕著な伸びを示しました。

今後も制度を活用して、持続可能な協働のモデルケースを確立していきたいと考えています。

さいごに

TUSでは、創業支援やスタートアップとの連携に関わる行政職員の方向けに、今回のような行政職員同士のイベントの他、スタートアップと気軽にコミュニケーションができる機会など、様々な形でスタートアップとの連携支援を行っております。ぜひ、ご関心のある方は【行政メンバー】としてメンバー登録頂ければと存じます。

さらに、都内自治体においては、【行政パートナー】という組織単位のメンバー区分を設けて支援を行っております。詳細はこちらのメンバー登録ページをご覧ください。

スタートアップと行政の連携に向け、TUSをぜひご活用ください!