【イベントレポート】ニューノーマル時代のスタートアップと行政とのパートナーシップ
2021.05.19
※本記事のセミナーは2021年2月4日に開催されました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が契機となって新たな社会課題が浮き彫りになっており、課題解決に向けたソリューションを持つスタートアップ企業の取り組みに注目が集まっている。企業が成長を遂げるには、事業の拡大を図る一方で会社に対する信頼性を高めることが不可欠で、パブリックポリシーという政策企画や公共政策関連の職種が重要な役割を果たしつつある。
こうした動きを踏まえ、メルカリの吉川徳明・会長室政策企画ディレクターを招き「ニューノーマル時代のスタートアップと行政機関とのパートナーシップ、『〝ルールメイキング思考〟の重要性」と題したセミナーを開催した。
複業人材の登用で地域を活性化
ルール変更を通じ、より最適な判断が行われるようにする
スタートアップが成長できるように、新しい技術やビジネスに応じ、社会において適切なルール(法律等)づくりを進めることが活動のコアで、狭義のロビイング活動となります。
ただ、より大事なことは、スタートアップ経営の意思決定において既存のルールを前提とせず、「法律等のルールをこのようにアップデートすることができたら、自社にこうした機会が生まれるのではないか」といったように、法律やルールの変更も可能な選択肢とした上で、より全体最適な意思決定が行われるようにするルールメイキング思考の発想が根付くことではないでしょうか。
パブリックポリシーを通じ社内の賛同者を増やす
つまり、われわれが「法律はこう変えられたらいいのに」といった発想で仕事をするだけでなく、新規事業を立ち上げようとしている人たちが「このルールは変えていけるのではないか」「この部分を変えるともっと新しいものができて、顧客だけでなく国民に役に立つのではないか」といった発想で事業を考え実行することが大事なことだと思っています。
パブリックポリシー関連は社外に働きかける部署ですが、自社の中で多くの賛同者を得るという観点からも重要な役割を果たします。
行政側との関係づくりの進め方
正攻法が一番の早道
特別な人脈を頼る必要があるわけではなく、担当部署の電話番号やEメールアドレスを検索し、そちらに正面から連絡を入れる正攻法で良いケースが大半です。担当部署が分からなかったり、連絡を入れた部署が担当ではなかったというようなケースでも、最初に連絡を入れた先が適切な部署を教えてくれるはずです。行政側が考える以上に、民間企業にとって直接行政の窓口に連絡を入れるのはハードルが高く感じるでしょうが、「つてがある人を探そう」などと考えて時間を使うよりも、結果的にスピーディに物事が進むケースが多いです。
企業の価値づくりのための課題
多種多様なステークホルダーを巻き込むには、社会的ストーリーが不可欠
非ビジネス領域でさまざまなステークホルダーを巻き込んでいくに当たり、「自社にとってこの課題を解決していくことが大事です」と語りたくなりますが、そういった姿勢だと社会の中で応援してくれる人は限られてきます。さまざまなな分野の人たちに「その案件はわれわれにとっても利害がある大事なものだ」といった共通点を見出してもらうには、「このサービスがあると、こういった社会課題が解決される、こういった人たちに役立つ」という社会的な文脈が必要です。専門誌や専門的なウェブサイトに掲載されるようなものではなく、NHKの朝7時のニュースで語られるような、共通の話題として取り上げられるストーリーにしないと、多種多様なステークホルダーを巻き込むことは難しいでしょう。
自社の社外に向けた発信が社会的に響く語り方なのかと常に自問自答することは大事な仕事です。そのためにはSNSやネット上の情報だけでなく、新聞やテレビ、雑誌などいろいろな情報に接することが重要です。
企業としての外部への働きかけ方
有識者や専門家と議論し考えを訴求
多くの政策決定プロセスでは行政庁が審議会や研究会などの会議を開催し、そこに有識者の方々が入り専門家と検討を進めていきます。そうした方々と日常的に議論しながらわれわれの考えを理解してもらうことが重要です。また、そうした議論を一般の方々が直接目にする機会は少なく、むしろ報道を通じて知ることが多いので、議論の背景等が正しく伝わるように、メディアへの働きかけも大事にしています。
ロビイング活動の在り方
「社会にとって大事」というストーリーが必要
大きな方向性を決定づけるのは法律論よりも、「社会にとって大事だね」と思えるストーリーを語れるかどうか。ストーリーづくりは何よりも大事です。業界団体を設立して行政官庁に働きかけることも、共通の利害を持った人たちの要望を踏まえて行動しているとアピールできるだけに有効ですが、業界にとって大事だと訴えること以上に、業界を超え、消費者、社会にとって大事だと訴えることが大事だと思っています。