ベンチャーの技術・サービスで行政課題を解決(1)

2021.08.30

広島県には大型の製鉄所や自動車工場東京都は健康・福祉やまちづくり、観光、教育など多岐にわたる分野で行政課題を抱えており、課題解決に向けてはベンチャー企業の技術・サービスが重要な役割を果たす。新連載「ベンチャーの技術・サービスで行政課題を解決」では、ベンチャー単独もしくは大企業との連携による課題解決に向けた取り組みを紹介する。

【安全・安心なまちづくり】 ドローンによる建築物の外観調査

著しい点検分野の伸び

安全・安心なまちづくりを実現するためには、橋脚や道路をはじめとする社会インフラや建物の点検の在り方が重要な役割を果たす。その点検分野で頭角を現しているのがドローンだ。

ドローンビジネス調査報告書2021」によると、調査も含めたドローンによる点検分野の国内市場規模は2020年度で約280億円だが、2025年度には1715億円まで拡大する見通し。この領域で堅調に推移するとみられるのが建物の外壁の点検だ。

赤外線によってタイルが浮いた部分を検知

建築物の老朽化に伴う外壁の崩落は大事故につながる危険性がある。このため法律的には10年に1回のペースで点検が課せられている。点検に当たっては足場を組んで熟練職人が打診棒を使って検査を進めるのが一般的な手法。しかし、職人の数は減少しており、効率性や安全性の追求という観点から注目を集めているのがドローンによる調査だ。

経年劣化によって壁面からタイルが浮くと隙間が生じるケースがある。その部分にこもった熱を赤外線によって感知し、補修個所を特定していくのがドローンによる調査法だ。風が強い日や日陰では威力を発揮しにくいという側面があるが、既存法に比べて安全かつ短時間で済み、点検費用が半分以下になることもある。

AIとの組み合わせによって点検記録を効率的に分析

SKY ESTATEは、すでに260か所以上でドローンによる調査を実施している有力ベンチャー。青木達也社長は東日本大震災で建物の外壁が崩落しているのを目の当たりにし、「打診よりも効率的で安心な手法によってまちづくりに貢献したい」という思いで事業を展開している。

同社の技術に着目したのが日鉄興和不動産で、業務提携契約を締結した。同社はオフィスビルなど数多くの建物を所有・管理しており、より安全性を高めるため、法律で定められた期間よりも短い6年周期で外壁点検を行っている。頻度が高い分、効率的な点検法が求められることなどを理由に、SKY ESTATEとドローンを活用した外壁調査の実証実験を開始した。

ドローンの特性は効率的に作業を進めるだけではなく点検記録を残せる点。今回の提携によって将来的には「AIとの組み合わせによって分析に要する期間を10分の1程度にまで短縮する」(稲垣修・企画本部経営企画部長兼イノベーション・DX推進室長)考えだ。こうした取り組みの積み重ねによって、より高度な維持管理法が確立され、まちづくりの安全・安心性が高まっていくことになる。

職人不足によってニーズが拡大

今後は、職人の高齢化が進み人手不足に拍車がかかるのは必至。安全・安心なまちづくりを進めるためにもドローン点検に対するニーズは一段と高まるとみられる。