ドローンが老朽化したインフラを効率的に保守点検

2021.08.30

行政機関との連携が進むとみられる
スタートアップの事業領域
ドローン
連携先が進むとみられる
行政機関
全国の自治体
行政機関側の課題
公共建築物や道路や橋など
インフラの老朽化
導入が進むとみられるプロダクト
ドローンからの赤外線によって
補修個所を特定する調査法
導入以後の感想/結果
検作業を効率的に行うのと同時に、
点検記録も残せる。
AIとの組み合わせによって
分析時間が大幅に短縮
今後の展望・課題
職人の高齢化が進み人手不足に
拍車がかかるのは必至であるふぁけに、
ドローン点検へのニーズは
高まるとみられる。

国が2014年に実施した調査によると、国や都道府県などが使う病院や学校などの公共建築物の総面積のうち、45%以上が築30年を超えていた。また、2033年に建築後50年以上経過するインフラは、道路・橋で6割を超える見通しだ。老朽化したインフラを維持するには保守点検を効率的に進めることが大前提となり、ドローン活用が注目を集めている。

著しい点検分野の伸び

「ドローンビジネス調査報告書2021」によると、調査も含めたドローンによる点検分野の国内市場規模は2020年度で約280億円だが、2025年度には1715億円まで拡大する見通し。この領域で堅調に推移するとみられるのが建物の外壁の点検だ。

赤外線によってタイルが浮いた部分を検知

建築物の老朽化に伴う外壁の崩落は大事故につながる危険性がある。このため法律的には10年に1回のペースで点検が課せられている。点検に当たっては足場を組んで熟練職人が打診棒を使って検査を進めるのが一般的な手法。しかし、職人の数は減少しており、効率性や安全性の追求という観点から注目を集めているのがドローンによる調査だ。
経年劣化によって壁面からタイルが浮くと隙間が生じるケースがある。その部分にこもった熱を赤外線によって感知し、補修個所を特定していくのがドローンによる調査法だ。風が強い日や日陰では威力を発揮しにくいという側面があるが、既存法に比べて安全かつ短時間で済み、点検費用が半分以下になることもある。

AIとの組み合わせによって点検記録を効率的に分析

SKY ESTATEは、すでに260か所以上でドローンによる調査を実施している有力ベンチャー。青木達也社長は東日本大震災で建物の外壁が崩落しているのを目の当たりにし、「打診よりも効率的で安心な手法によってまちづくりに貢献したい」という思いで事業を展開している。
同社の技術に着目したのがデベロッパーの日鉄興和不動産で、業務提携契約を締結した。同社はオフィスビルなど数多くの建物を所有・管理しており、より安全性を高めるため、法律で定められた期間よりも短い6年周期で外壁点検を行っている。頻度が高い分、効率的な点検法が求められることなどを理由に、SKY ESTATEとドローンを活用した外壁調査の実証実験を開始した。
ドローンの特性は効率的に作業を進めるだけではなく点検記録を残せる点。今回の提携によって将来的には「AIとの組み合わせによって分析に要する期間を10分の1程度にまで短縮する」(稲垣修・企画本部経営企画部長兼イノベーション・DX推進室長)考えだ。こうした取り組みの積み重ねによって、より高度な維持管理法が確立され、まちづくりの安全・安心性が高まっていくことになる。

職人不足によってニーズが拡大

今後は、職人の高齢化が進み人手不足に拍車がかかるのは必至。安全・安心なまちづくりを進めるためにもドローン点検に対するニーズは一段と高まるとみられる。